■ こんな無茶苦茶な事務所も ■
ある時、知人から相談がありました。
内容は、
知人の遠縁にあたる方がマンションの計画をされて、
その方の友人の紹介で、設計事務所と知り合い、
その設計事務所から別の設計事務所を紹介され、その設計事務所に依頼して
設計を進めている最中との事でした。
私は、かって、設計業務はどのように進めるのが良いのかをその知人に話をしていたので
勿論、設計の進め方というのは、設計事務所や建築家によって異なるのですが、
私の建築に対する考え方について話をしていたので
知人によると、どうもおかしいと言うのです。
何がおかしいのかを聞くと、
『 設計打ち合わせの回数が少ないし、設計図書をなかなか見せてくれない、
それに、建設業者の見積書を全て設計事務所にだけ持ってこさせる様になっており、
図面説明も設計事務所で行うらしい』とのことであった。
ここに書いてある文章だけを読めば、
これでなにがおかしいのかを探し出す事のほうがおかしいと思う人が多いと思いますが、
このような事はよくある話で、
私の感じるところ、
その人の、設計を依頼した建築家に対する信頼度はどの程度あったのだろうか?
又、その建築家は、
クライアントからの信頼を得るための努力があったのだろうか?
という事である。
私がおかしいと思う事は、
最初に紹介を受けた設計事務所への設計依頼でなく、
その設計事務所が連れてきた設計事務所に設計を依頼したのかである。
たまたま最初に紹介された設計事務所が多忙で依頼を受る事ができなかったのか、
最初に紹介された設計事務所に対する絶大なる信頼関係があり、
その設計事務所の紹介だから間違いないと判断したのか?
私の不思議とするところである。
とりあえず直接話を聞いてほしいいとの事で、
後日、その身内にあたる人とお会いすることとなった。
お会いして、一通り現在の進展状況を聞いた後、
私の疑問とする、
何故最初に紹介された設計事務所に設計業務を依頼しなかったのか訊ねたところ、
結論としては
最初の設計事務所は、設計業務ができないブローカーであり、
そのブローカーの連れてきた設計事務所に設計業務を依頼したのである。
ここまでの話であれば、
ブローカーの紹介であろうと、誰の紹介であろうと、
その設計事務所との信頼関係をつくり、
立派な建物を設計監理してもらえば良いのである。
当然のこととして、
ブローカーは、設計事務所を紹介した後は、一切、設計業務に関与してこない、
あとは紹介先の設計事務所から紹介手数料を受け取るだけでる。
業務を受託した設計事務所は、
クライアントの為に誠意を尽くして設計業務を行えば良いのだが、
世の中そううまくはいかない。
簡単に信頼関係をつくればよいと言っても一朝一夕でできるものでもない。
クライアントと建築家は、設計の打ち合わせ期間を通じて、
その建築家の人となりや、建築に対する考え方を理解しなければならないし、
クライアントの建物に対する情熱や要求事項、
そして、
クライアントの人生観等を引き出さなければならない。
そのような会話や作業を繰り返し行うことにより、
信頼関係はつくられてくるのであると私は理解している。
先に述べたように、この事は、業務報酬料にも跳ね返ってくる。
設計契約の業務報酬料は、私からみればダンピングをした内容であり、
その業務報酬からブローカーにキックバックをしなければならない。
そうなれば、どこかから補填しなければならない。
当然クライアントにわからないようにと考えたのだろう。
不幸の始まりである。
(その事務所は不幸の始まりとも思わず、当然の事と思っているのかもしれないが)
その補填作業の一つの方法として、建設業者の選定にある。
業者選定にさいして、設計事務所の紐付きと言えば聞こえは悪いが
(相互利益を守というか、ギブ&アンドテイクというかどちらでも似たようなものであるが)
懇意にしている建設業者に工事を請け負わせる事である。
当然、補填するという観点があるわけだから、
その設計事務所と建設業者との間で何らかの取り決めがあったと考えられる。
途中経過は省くが、
結果的に、私がその設計事務所と面談することとなり、
建設工事業者の入札方法や、建築予算の提出方法などを指示しすることとなった。
業務を依頼されていた設計事務所にとっては寝耳に水で、
クライアントの依頼だからしぶしぶ従ったようなものである。
業者選定に関しては、設計事務所の紹介する建設業者だけでの入札でなく、
クライアントの推薦業者を参加させる事と、
入札見積もり書の提出時間を決め、設計事務所並びに、
クライアントの所へ1部づつ提出させる事にした。
そして、
設計図書が出来上がると同時に、積算事務所へ積算依頼をする事の指示をした。
勿論、積算事務所への積算依頼は有償となる為に、
クライアントはその設計事務所に積算費用の支払を行ったのである。
以上の事が行われれば問題も無く、事が進むだろうと(一抹の不安もあったのだが)思っていた。
その一抹の不安とは、その設計事務所が、
私の指示した内容の意味することが何なのかを理解しているのか否かである。
数週間後、クライアントから入札参加業者の見積書が出来上がり、
又、積算事務所の積算書も出来上がったので見ていただきたいとの連絡が入った。
一度顔を突っ込んだ関係上、断ることもできず、
並べられた見積書と積算書を見て不安が的中してしまった。
なんなんだこの設計事務所は!
人を馬鹿にしているというか、人の道にはづれていようと平気なのか、
それともまるっきりの馬鹿なのか!
人を騙す事になんの恥じらいも感じていないのか!やはり不幸の始まりであった。
先に述べたように、
クライアントは積算事務所への報酬料を支払い
積算書の作成をその設計事務所に依頼をしたのである。
この事は、
クライアンにとっては、設計事務所を信頼しようとの意味も含まれていたはずである。
しかし、信じ難い事実が判明した。
その設計事務所の頼みで入札に参加させたある建設会社の提出見積もりの内容と、
積算事務所で積算させた内容がほとんどいっしょである。
ほとんどと言ってしまえば、
そんな偶然も時にはあるだろうと思う人がいるかもしれないが、
偶然なんてありえない内容がそこにはあった。
建築工事に関わる業種は百を超えるのである。
その項目の表現の方法は、建設会社により必ず異なっている。
同じ表現になることは不正をしない限りありえないのである。
まして、
積算事務所の積算書と建設会社の見積書の表現が同じである訳がない。
詳細の項目の順番や、間違いまでが同じである。
嗚呼、開いた口が塞がらない。
詰まるところ、
その設計事務所は、補填作業のために建設会社と結託し、
積算料と称して金銭をクライアントから受け取り、
建設会社に見積もり書と積算書を作らせたのである。
そして、
その建設業者が請負った場合はキックバックの取り決めもあっただろうと
想像することは容易である。
嗚呼、なんと大馬鹿者であろうか!
クライアントは決してこんな馬鹿な建築家に引っ掛かってはならない。
そして、
不幸の始まりに気付くことなく、クライアント自らが招いていることもあるのです。